ゲスト 細川周平(国際日本文化研究センター 教授)
2015年8月28日 (金) 19:00〜21:00 MEDIA SHOP(京都市中京区)入場無料
電気式録音が実現する1920年代以前より、日本ではすでにレコードの音を楽しむ文化が姿を現しつつありました。当時のレコードを取り巻く環境やその聴き方、レコードとともに隆盛したジャンルなどについて、日本の大衆音楽史の観点から研究を進めている細川周平さんにお話を伺います。
◆報告(谷口文和)
音響メディアやそれにまつわる文化への関心を、研究者のサークルを超えて広く共有したいという思いから始まったトークイベントシリーズ。手探りの状態から始まった第1回ですが、写真を専門にされる方や名古屋から来られた方も参加され、うれしい限りです。
今回のテーマ「日本の機械録音時代」は、明治10年頃から昭和初期にあたります。ゲストの細川周平さんは、この時期における蓄音機の普及を、日本の近代化のプロセスと重ね合わせてとらえています。欧米から文化を積極的に取り入れようとした明治期、登場したばかりの蓄音機を手に入れたエリート層は、まだ生で聴く機会のなかったクラシック音楽に触れていました。つまり、西洋音楽の受容は音の複製メディアの受容と一体となっていました。その後、浪曲のブームや流行歌の登場を通じてレコードが庶民にも広まっていくにつれて、レコードを愛好する人々やその実践にも層が生じていったのではないかと考えられます。
これまでもっぱら音楽史として語られてきた日本のレコード史をメディア史の観点からとらえることは、欧米の出来事ありきで考えがちだった音響メディアの形成過程を見直すことにもつながります。例えば、録音技術が人間の声をそのままに再現するという期待は、日本ではどの程度あったのか。こうした、ある種の美学的な問題を検証する上でも、歴史社会的な補助線が重要だという感触を得たイベントでした。
※イベントの記録も近日中の公開を予定しております。