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#2 新しい「楽器」をつくる――録音と電子楽器以降の楽器

 

ゲスト 斉田一樹(木下研究所 客員所長)

2015年9月26日(土)17:00〜19:00
東京藝術大学美術学部中央棟第二講義室(東京都台東区) 入場無料

リズムマシン、サンプラー、シーケンサーといった20世紀後半につくられた電子楽器は、「楽器」とはなにかという根本的な問いかけをするものです。今回のトークはこうした新しい「楽器」が実際につくられる現場を見つめます。電子楽器はどんなアイデアやプロセスから生まれるのでしょうか。ミュージシャン/エンジニアとして個人でも企業でも電子楽器開発を行う、斉田一樹さんにお話を聞きます。

 

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(左から)金子智太郎、斉田一樹氏、谷口文和、中川克志

 

 

報告(金子智太郎)

第2回のテーマは楽器製作でした。イベント冒頭では、中川克志さんが『音響メディア史』「13章 新しい楽器」の要点を次のように説明しました。1960年代に開発された音楽機材の特徴は、操作と発音の契機を分離したことだった。そしてこの分離がそれまでの楽器の定義をゆるがすことになった。今回のゲスト斉田一樹さんには、いわばこうした分離以降の楽器製作について、話していただきました。

企業で電子楽器開発に携わるとともに、個人でも楽器をつくって演奏している斉田さんは、この2つの実践をモチベーション、プロセス、社会的制約などさまざまな観点から比較しました。企業での集団による開発では、既存の製品をベースにアイデアを共有しながら工程を進めていくのに対して、個人の製作ではより具体的なイメージをかたちにしようとします。他にも2つの実践は同時代のテクノロジーとどのような関係にあるのか、両者のクロスオーバーは現在どうなっているのかなどをめぐって、実例にもとづいた話が続きました。

質問の時間には、例えば、コンピュータでなんでもできる時代にハードウェアとして楽器をつくる意義はどこにあるのかといった現実的な問題を、登壇者と参加者が意見を出しあって考えました。このときあがったさまざまな論点はどれも現在の音楽文化にとって切実な問題であり、それらを検討しながら、あらためて楽器製作という実践の同時代性を確認することができたと感じました。